紙の領収書をスマホで撮って保管すること自体は、誰でも自由にできます。捨ててよいかどうかが、立場によって変わります。個人事業主や副業で確定申告をしている人は、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件を満たして保存すれば紙を廃棄できます。要件は2024年(令和6年)1月の改正で整理され、いまは200dpi以上のカラーで読み取る、受領後の入力期間内に保存する、タイムスタンプか訂正・削除の履歴が残るシステムに入れる、日付・金額・取引先で検索できるの4点が中心です。会社員が医療費控除や家計のために撮る領収書には、この法律は関係ありません。その代わり、医療費控除の領収書は紙の原本を5年間残す必要があります。この記事では、まずどの領収書がどちらに当たるかを分け、そのあと要件と現実的な運用を説明します。

スキャナ保存の要件、2024年1月以降の数字
  • 200dpi以上の解像度で読み取る赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー。一般書類はグレースケール可
  • 約2か月受領後、業務の処理期間を経過した後速やかに(最長2か月と概ね7営業日以内が目安)入力期間の制限。規程があれば採用できる
  • 2つ改ざん防止はタイムスタンプか、訂正・削除の履歴が残るシステム期間内に保存したことが確認できれば、タイムスタンプの代わりになる
  • 7年帳簿・書類の保存期間(個人事業の一部書類は5年)法定申告期限の翌日から

出典:国税庁 電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】、令和5年度税制改正パンフレット。2026年10月確認。

まず分ける:法律の対象になる領収書と、ならない領収書

電子帳簿保存法は、所得税法や法人税法で帳簿・書類の保存義務がある人のための法律です。個人なら、事業所得や不動産所得があって確定申告をしている人。副業で開業届を出している人もここに入ります。この人たちの領収書・請求書・契約書は「国税関係書類」で、紙で受け取ったものはスキャナ保存、データで受け取ったものは電子取引データ保存の対象です。

一方、給与だけの会社員が持つ領収書、たとえば医療費控除のための病院の領収書や、家電の保証書に添えるレシートは、この法律の対象ではありません。医療費控除の領収書は国税庁の案内どおり自宅で5年間保存が必要で、写真は控えにはなっても原本の代わりにはなりません。家計のレシートは、そもそも保存義務がないので撮って捨てて問題ありません。

領収書の種類 法律 紙を捨てられるか
事業の経費の領収書(紙) 電帳法 スキャナ保存 要件を満たして保存すれば可
事業の領収書・請求書(メール・ダウンロード) 電帳法 電子取引データ保存 データのまま保存が義務。印刷だけは不可
医療費控除の領収書 所得税法(自宅保存5年) 不可。原本を残す
家電の保証書・レシート 法律の義務なし 可。ただし保証期間中は持っておく
日用品・食費のレシート 義務なし 可

スキャナ保存の要件:スマホで満たせる

2024年1月1日以降のスキャナ保存で守ること

要件を一つずつ見ると、スマホのカメラで十分に満たせます。

読み取り。 解像度200dpi相当以上、赤・緑・青それぞれ256階調(24ビットカラー)以上。一般書類(見積書や注文書など資金の流れに直結しない書類)はグレースケールでもかまいません。いまのスマホの写真は条件を軽く超えますが、暗い部屋や斜めからの撮影で文字が潰れると意味がないので、明るい場所で真上から撮ります。

入力期間。 受け取ってから速やかに(概ね7営業日以内)、または業務の処理サイクルを経過した後速やかに(最長2か月と概ね7営業日以内)。後者を使うには事務処理の規程が必要で、規程を定めて後者を選べば「月末にまとめて」もこの範囲に収まります。

改ざん防止。 総務大臣が認定する業務のタイムスタンプを付すか、訂正・削除の事実と内容を確認できる(または訂正・削除ができない)システムに保存します。入力期間内に保存したことが確認できるシステムなら、タイムスタンプの代わりになります。市販の会計ソフトや経費精算アプリのスキャナ保存機能は、この要件を満たす形で作られています。写真アプリにそのまま置くだけでは満たせません。

検索。 取引年月日、取引金額、取引先で検索できること。税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられるなら、範囲指定や2項目の組み合わせ検索は不要です。

2024年1月の改正で楽になったこと

令和5年度税制改正により、2024年1月1日以後にスキャナ保存する書類から、次の要件が廃止されました。

  • 解像度・階調・大きさに関する情報の保存。読み取り時の200dpi以上・カラーという要件自体は残っていますが、その情報を記録として保存しておく必要はなくなりました。
  • 入力者等情報の確認。誰が入力したか、誰が監督したかを確認できるようにしておく要件がなくなりました(電子取引データ保存も同様)。
  • 帳簿との相互関連性が必要な書類が、契約書・領収書・請求書・納品書など資金や物の流れに直結する「重要書類」に限定されました。

小規模な事業者にとっては、「スキャナの設定を記録する」「入力担当者の一覧を作る」といった実態に合わない作業が消えたことになります。

電子取引データは「印刷して保存」が使えない

領収書はいつまで残すか(個人)
  • 青色申告の帳簿・書類(原則)領収書も原則7年。白色申告も収入・経費の帳簿は7年7年
  • 請求書・見積書など一部の書類青色申告は請求書・見積書・納品書・送り状など。白色申告は領収書を含む書類全般5年
  • 医療費控除に使った領収書自宅保存。電子帳簿保存法の対象外5年
  • 家電などの保証書とレシート高額な物は使っている間ずっと保証期間中
  • 日用品のレシート家計の記録として撮っておくのは自由確認後は不要

メールの添付で届いた請求書、通販サイトからダウンロードした領収書、アプリの決済履歴。これらは電子取引データで、法人・個人事業者はデータのまま保存する義務があります。2023年末までは一定の条件で紙に印刷して保存する扱いが認められていましたが、2024年1月以降はデータ保存が原則です。改ざん防止(タイムスタンプ、訂正削除履歴、または事務処理規程)と検索の要件はスキャナ保存とほぼ同じです。

実務でいちばん多い落とし穴は、紙とデータの両方で受け取る取引です。店頭で紙のレシートをもらい、同じ買い物のメールも届く。この場合、どちらか一方を正とし、保存の仕組みをそろえておくと迷いません。

保存期間:7年と5年

青色申告は帳簿・書類とも原則7年で、請求書・見積書・納品書・送り状など一部の書類は5年。白色申告は収入・経費を記載した帳簿が7年、領収書・請求書などの書類は5年です。起点は法定申告期限の翌日。詳しい一覧は家庭の書類の保管期間と、確定申告の必要書類にまとめました。電子で保存しても期間は同じで、途中でソフトを乗り換えるときにデータを書き出しておく必要があります。

個人・副業の現実的な運用

いちばん簡単なのは、事業の領収書は会計ソフトのスキャナ保存機能、それ以外はスマホと分けることです。事業の領収書を受け取ったら、その日のうちに会計ソフトのアプリで撮り、紙は月末まで封筒に入れておいて、月次の確認が終わったら廃棄する。これで入力期間、改ざん防止、検索の要件が一度に満たせます。レシートの撮り方と領収書をデジタルで残す方法の比較も参考にしてください。

家庭の領収書は、法律の縛りがない分、使い勝手で選べます。Paperlockに撮って入れておけば、店名、日付、金額を読み取って自動で整理し、「保証書の期限は?」「3月の医療費の合計は?」と聞けば該当する領収書を添えて答えます。医療費控除の領収書は紙の原本を残したうえで控えとして入れておくと、申告の集計が楽になります。なお、Paperlockは電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプや訂正削除履歴)に対応したシステムではないので、事業の領収書の法定保存には会計ソフトを使ってください。

要件の細部や、自分の事業がどの区分に当たるかは、国税庁の特設サイトの一問一答と、税務署か税理士で確認してください。