高額療養費は、1か月(1日から末日)に医療機関や薬局の窓口で払った医療費が、年齢と所得で決まる上限額を超えたとき、超えた分が戻ってくる制度です。申請の期限は2年。健康保険の給付を受ける権利は受けられるようになった日の翌日から2年で時効になり、高額療養費の起算日は診療月の翌月1日です。だから「去年の入院、申請していない」という人も、まだ間に合うことが多い。先に窓口負担を上限額までに抑えたいときは、マイナ保険証を使えば限度額適用認定証はいらず、使わない人は保険者に認定証を申請します。2026年(令和8年)8月からは上限額の見直しと年間上限の新設がありました。この記事では、期限の数え方、申請に要るもの、認定証とマイナ保険証の関係、制度見直しの要点、そして手元に残す書類をまとめました。
- 2年申請できる期間(消滅時効)健康保険法。受けられるようになった日の翌日から
- 翌月1日高額療養費の時効の起算日は診療月の翌月1日協会けんぽの案内
- 最長1年限度額適用認定証の有効期間申請を受け付けた月の1日から。2026年8月以降の交付分は最長2027年7月31日まで
- 約9.3万円医療費100万円のときの自己負担の例(70歳未満・年収約370〜510万円、2026年8月からの制度)厚生労働省の例示。所得区分で変わる
出典:協会けんぽ、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」。2026年10月確認。
期限の数え方:診療月の翌月1日から2年
- 入院・治療が決まったらマイナ保険証を使うか、限度額適用認定証を申請する(窓口負担が上限額までになる)
- 診療月窓口で支払い。領収書と診療明細書を受け取る
- 診療月の翌月1日高額療養費の時効がここから進み始める
- 診療月の約3か月後〜保険者が医療機関の請求(レセプト)を確認した後、申請分が支給される
- 翌月1日から2年この日を過ぎると申請できない
協会けんぽの案内(2026年10月確認)。保険者により支給までの期間は異なる。
協会けんぽの案内では、健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日から2年で時効になります。給付の種類ごとに起算日が決まっていて、高額療養費は診療月の翌月1日です。療養費(立て替えた医療費)は費用を支払った日の翌日、傷病手当金は労務不能だった日ごとにその翌日、と種類で違います。
具体例で言えば、2026年10月に入院した分は、2026年11月1日から2年、つまり2028年10月31日まで申請できます。入院が月をまたいだ場合は月ごとに別の申請になり、期限も月ごとに進みます。退院から1年以上経って気づいた人でも、月ごとに数え直せば間に合う分があるはずです。
健康保険組合や国民健康保険では、自動で振り込まれる、申請書が届く、自分で申請する、と保険者ごとに運用が分かれるので、加入先の案内を確認してください。お知らせを待たずに、自分から申請することもできます。
申請に要るもの
協会けんぽの場合、高額療養費支給申請書に、保険証(資格確認書)の記号・番号、診療を受けた人、医療機関名、診療月、支払額、振込先口座を記入して支部に提出します。協会けんぽが案内する添付書類に領収書は原則として含まれず(公費助成で窓口負担が減額された場合などを除く)、支払額は医療機関から保険者に届くレセプト(診療報酬明細書)で確認されます。そのため支給までには、協会けんぽの申請書にあるとおり診療月後3か月以上かかります。
計算の単位は、月ごと、医療機関ごと、入院と外来は別、医科と歯科は別です。1つの医療機関で上限に届かなくても、同じ月に同じ世帯(同じ保険)の家族が払った分を合算して上限を超えれば対象になる「世帯合算」(70歳未満は、医療機関ごと・区分ごとの自己負担額が21,000円以上のものだけを合算)や、直近12か月に3回以上該当すると4回目から上限が下がる「多数回該当」があります。だから領収書と診療明細書は、月と医療機関が分かる形で残しておきます。
国民健康保険や後期高齢者医療では市区町村が、健康保険組合では組合が窓口です。領収書の添付を求める保険者もあるので、申請前に捨てないでください。
限度額適用認定証とマイナ保険証
高額療養費は「払った後で戻る」仕組みなので、入院のときは一度まとまったお金が要ります。これを避けるのが限度額適用認定証で、窓口に提示すると支払いが最初から上限額までになります。
いまはマイナ保険証で受診し、医療機関の受付で「限度額情報の提供」に同意すれば、認定証がなくても同じ扱いになります。認定証が要るのは、マイナ保険証を使わない人(資格確認書で受診する人)と、医療機関がオンライン資格確認に対応していない場合です。協会けんぽでは、認定証の有効期間は申請書を受け付けた月の1日(資格取得月はその日)から最長1年で、申請月より前の月にはさかのぼれません。2027年(令和9年)8月に所得区分の見直しが予定されているため、2026年8月以降に交付される認定証の有効期限は最長で2027年7月31日までとされています。市区町村民税が非課税の人は、認定証ではなく限度額適用・標準負担額減額認定証を申請します。
マイナ保険証と資格確認書の関係、どちらを持つかは健康保険証の有効期限とマイナ保険証とマイナ保険証と資格確認書にまとめています。
2026年8月からの見直し
厚生労働省の案内では、2026年8月と2027年8月の2段階で高額療養費制度が見直されました。2026年8月からの制度では、70歳未満で年収約370万〜約510万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円まで抑えられると例示されています。見直しの柱は、療養期間が短い人に追加の負担を求める一方で、多数回該当の額は維持し、新たに**年単位の上限(年間上限)**を設けて長期療養者の負担を軽くすることです。2027年8月には所得区分の細分化が予定されています。
自分の上限額は、年齢(70歳未満か以上か)と所得区分で決まります。区分は保険者が標準報酬月額や所得で判定するので、加入先の案内か厚生労働省のページの表で確認してください。
医療費控除との関係
高額療養費で戻ってきた分は、医療費控除の計算では「保険金などで補てんされる金額」として支払った医療費から差し引きます(その給付の対象になった医療費が限度)。支給額がまだ決まっていないときの扱いは、税務署か国税庁の案内で確認してください。医療費控除の領収書は確定申告期限から5年間、提示を求められることがあるので、高額療養費の支給決定通知書も一緒に残します。
2年を無駄にしないための記録
手でやるなら、月末に「今月の医療費」を家族分まとめて確認し、合計が高いと感じた月は領収書を撮影して「医療費」のアルバムに入れ、翌月1日をカレンダーに「高額療養費の時効開始」として記録します。入院の予定が分かったら、その時点でマイナ保険証の限度額情報の同意か認定証の申請を済ませます。
Paperlockに領収書と診療明細書を入れておけば、医療機関名、診療月、金額を読み取って整理し、「2026年3月に払った医療費の合計は?」「〇〇病院の入院の領収書はある?」と聞けば、該当する書類を添えて答えます。支給決定通知書や認定証も同じ場所に入れておくと、医療費控除の計算のときに引く額がすぐ分かります。認定証の有効期限は読み取って保存し、通知をオンにしていれば30日前と7日前に知らせます。
申請書の様式、添付書類、支給までの期間は保険者ごとに違います。加入している保険者の案内で確認してから申請してください。